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第7話 「ローズマリーさんありがとう」

2001年01月18日

最近のバックナンバーからの話題をお伝えします。昨年11月16日に発表したビズ冬号の巻頭特集は、「ローズマリー・ヴェレイ 40歳からの挑戦」でした。ローズマリーさんはイングリッシュ・ガーデン界の頂点に立つ女性ガーデンデザイナーで、チャールズ皇太子の庭づくり指南役としても知られた方でした。そのローズマリーさんが、今年5月31日、83歳でお亡くなりになりました。本誌のガーデン・フォトグラファー、アンドリュー・ローソン氏からの連絡によると、葬儀には多くの参列者があり、最前列には皇太子が着席されたとのことです。仕事においてはつねに学習を重ね、死の直前まで現役デザイナーとしてつとめた見事な一生でした。特集では彼女の人生と仕事、そして仕事に対する信念を、ご自宅に伺ってじっくりインタビューしています。溌剌と乗馬を楽しむ姿から長男誕生の喜びに満ちた母親ぶり、たくさんの子どもや孫に囲まれた幸せな記念写真まで、代表作の美しい庭の数々と共に紹介しています。

BISESが創刊してしばらくした頃、私が初めてローズマリーさんの有名な庭、バーンズレイハウスを訪ねたのは真冬でした。それなのに芝生は青々として目にやさしく、ノットガーデンは端正な形を守り、円形にまとめられた一群のコニファーはそれぞれの樹形の魅力を存分に発揮し、ギリシャ神殿を模した水辺のあづまやは静寂の憩いをシンボライズして胸に迫るものがありました。冬の庭を提案して、一躍ガーデン界の注目を集めたという、ローズマリーさんのガーデンに、まさにその季節、初訪問することになったのは、偶然のことではありましたが、ラッキーでした。今、私の机の上に、For Hanakoとサインのある彼女の著書がのっています。少し震える文字が晩年のローズマリーさんの思い出として大切に思えます。もしかしたら、2000年11月の本誌大特集は、世界のガーデン誌の中でローズマリー・ヴェレイさんを多角的に取材した最後のものかもしれません。海外誌の傾向として、作品はとりあげても、作者に焦点をあてることはあまりありません。この特集製作においても、そうした意味では過去の資料が全くといっていいほど見あたりませんでした。編集者として生前の彼女から、貴重なお話をうかがえたこと、そしてそれを記録できたことに満足感を覚えます。

英国庭園の美しさを私たちに教えてくださったローズマリー・ヴェレイさんに、心からありがとうの言葉を贈ります。

執筆者プロフィール

ガーデニング誌『BISES』の元編集長。創刊から休刊までの146冊、25年間務めました。1997年流行語大賞トップ10に選ばれた「ガーデニング」は、私が全国に広めた言葉です。これはGARDENINGをカタカナにしたもので、造語ではありません。今では日本語として立派に定着しましたね。