北海道旭川で100年続く米農家として歩んできた「上野ファーム」。”農地に花を“と母の悦子さんとともに一からチャレンジした庭は、植栽の充実とデザインの巧みさに日本の庭もここまで来た!と高い完成度が評価されました。また都市と農村の交流の場としてガーデンを活用するという考えも庭の可能性を広げるものとして注目されました。その後、砂由紀さんは本誌で連載をスタート。2006年には倉本聰脚本の連続テレビドラマ『風のガーデン』の庭デザイン・制作に抜擢され活躍の場を広げていきます。グランプリ受賞当時は1,600坪だった庭も、昨年プレオープンした新エリア「ノームの庭」を含め、約2倍に拡大。年間6万人の来園者が訪れる、北海道を代表する観光ガーデンへと生長しています。
北海道に農場ガーデンが誕生しました!上野砂由紀さん/北海道
庭の広さは1600坪。作り始めて12年と4年の部分があり、5つのエリアに分かれています。英国風をベースにしながらも北海道の風土やダイナミックさ、開放感を加えこれぞ北海道ガーデンといえる新しい庭のスタイルを目指す上野家へ、お祝いのメダルを携え旭川を訪れました。
旭川空港から車で30分。見渡す限り田畑が続く農村地帯に、上野家の庭『上野ファーム』があります。小高い丘が目印です。
「あの奥に見える丘も庭の一部で、射的山といって矢尻も出土した歴史ある山なんですよ」との解説。丘の中腹に雲竜柳という個性的な枝降りの高木がどっしりと構えています。「先代が残した木です。樹齢70年かしら。私たちの庭の歴史を見守る木ですね」と話す悦子さん。嫁ぎ先の今の場所で稲作を手伝ううちに、次第に近隣の農村風景を変えたい、景観をよくしたいと、木を植えることから庭づくりをスタートさせました。「最初は市や地域のとまどいもありましたが、農業の多面性の表現として、また、都市と農村の交流の場としてガーデンの役割が大切だと、農業委員会も理解を示し、旭川で初めて転用が認められたんです。」この一件を境に、いよいよ庭造りが本格化していきます。そして4年前、娘の砂由紀が英国の研修から戻り、それの体験を地元でいかせるのではと庭づくりに参加。「夫と家族3人で暗渠工事、水道の配管工事をして、土のpHを農業関連機関で調べてもらったりと、農業のノウハウをフル活用して土作りをしました。」毎日の農作業より過酷だったと語ります。庭の傍らに置かれた大きなトラクターも当時大活躍したと悦子さん。小柄な砂由紀さんも乗りこなすとはたくましい限りです。砂由紀さんは英国から種を取り寄せるなど、植栽とデザインを担当。「庭をつくって一体どうすんだろうね、って地元の噂もありましたが、私は趣味でも庭をつくっていこう!って、将来なんて考えないで没頭していたら、この庭が口コミで広がり、人が訪れるまでになりました」と砂由紀さんは明るく笑います。北海道のオープンガーデングループへ参加した3年前は、悦子さんが声をかけた婦人会30人とわずかな来訪者だけでしたが、今年は毎日のように人が訪れました。